令和5年4月1日から、期間徒過後の救済規定に係る回復要件が緩和されました。具体的には、救済の基準が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に変更され、「正当な理由」がなくても期間徒過が「故意によるものでない」場合にも権利が回復できるようになりました(特許庁HPのお知らせはこちら)。
1.救済対象手続について
救済対象となる手続は、改正前と同一の18種類の手続であって、施行日である令和5年4月1日以降に手続期間を徒過した手続です。
2.特許に係る救済対象手続と救済手続期間について
救済対象となる手続のうち、特許に係る手続は以下の通りです。
(1)外国語書面出願の翻訳文の提出期間
(2)審査請求期間
(3)特許料及び割増特許料の追納期間
(4)外国語でされたPCT特許出願の翻訳文の提出期間
(5)PCT出願における在外者の特許管理人選任期間
(6)国内優先権主張期間
(7)パリ優先権主張期間
これらの手続の救済手続期間は以下の通りです。
(1)~(5)は、期間徒過後の手続ができるようになった日から2月以内、かつ、手続期間の経過後1年以内に所定の手続きを行うことが必要
(6)~(7)の優先権主張期限の期間徒過は、優先権主張期限日から2月以内に優先権主張出願を行うことが必要
(7)の優先権の回復請求を行ったPCT出願が、指定官庁としてのJPに移行した案件は、国内書面提出期限日(翻訳文提出特例期限日)後1月(国内書面提出期間内に出願審査の請求をした場合はその請求の日から1月)以内に回復理由書の提出が必要
3.回復手数料について
救済手続期間に回復手数料の支払いが必要となります。
特許 212,100円
実用新案 21,800円
意匠 24,500円
商標 86,400円
4.回復要件の判断について
出願人等から救済の対象となる手続書面と回復理由書が救済手続期間内に提出されているか、回復手数料が納付されているか、「故意でない基準」を満たすかが検討され、回復の判断がなされます。
また、出願人等が手続をしないと判断して救済手続期間を徒過した後に、状況の変化などを理由に救済手続をすることとした場合は、手続をすることができなかった理由が「故意によるものである」と判断され救済が認められない可能性があります。このような例として例えば、期間徒過後の社内の方針転換が挙げられます。
これらの改正により、回復要件が緩和された点がメリットではありますが、回復理由書の提出とともに、本改正で新設された回復手数料の支払いも必要となります。
なお、PCT出願についても、優先権の回復申請を受理官庁である日本国特許庁に提出する場合に優先権の回復制度の回復要件が「故意でない」基準に緩和されました(特許庁HPのお知らせはこちら)。
(記事担当:赤羽桃子)