知財情報

【欧州】英国のEU離脱(Brexit)が欧州知財制度へ与える影響について

6/23に実施された英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票の結果、英国のEU離脱が決まりました。英国のEU離脱は政治・経済を中心に世界的に大きな影響を与えると言われています。欧州代理人からの情報及び現地公的機関の情報によると、英国のEU離脱が欧州知財制度に与える影響は現時点では、以下の通りです。

◆欧州特許制度(欧州特許条約、EPC)

欧州特許条約はEUとは別の枠組みであり、また、欧州特許庁はEUから独立した組織であるため、欧州特許制度は英国のEU離脱の影響を受けない。具体的には以下の通り。

・欧州特許庁(EPO)経由での特許取得手続や、欧州特許付与後の英国における有効化(validation)手続はこれまで通り可能

・英国で有効化(validation)手続された欧州特許を含め、既存の欧州特許への影響はない

・英国在住の欧州弁理士(European Patent Attorney)は欧州特許庁における出願・権利化手続を引き続き代理することができる(EU離脱後も可能)

◆欧州単一特許(Unitary Patent)及び欧州統一裁判所(Unified Patent Court)

欧州単一特許及び欧州統一裁判所の制度導入には統一特許裁判所合意(AGREEMENT ON A UNIFIED PATENT COURT)への英国、ドイツ、フランスのEU加盟国3カ国の批准が必要とされている。英国がEUを離脱する場合にはドイツ、フランス、イタリアの3カ国の批准が必要となるが、それは英国がEUを実際に離脱してからである。英国のEU離脱交渉はこれから始まり、少なくとも2年はかかる可能性が高い。また制度見直しのため再交渉が行われる可能性も高い。来年(2017年)に予定されていた欧州単一特許及び欧州統一裁判所の制度導入が遅れることは確実である。

◆欧州共同体意匠制度(European Community Design)及び共同体商標制度(European Community Trademark)

欧州共同体意匠制度及び欧州共同体商標制度に基づいて取得された権利はEU域内に及ぶとされている。しかし、英国がEUを離脱した時点で英国はEU域外となり、当該権利が英国内に及ばなくなる。(この点について今後、何らかの手当てがなされるのではないか、との憶測が流れていますが、欧州連合知的財産庁(EUIPO)は現時点(6/28)でコメントしておりません。)

◆参考情報

・欧州特許庁長官の声明:http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20160624.html

・欧州連合知的財産庁の共同声明:https://euipo.europa.eu/ohimportal/en/web/guest/news/-/action/view/3046131

(記事担当:横田 修孝)

月別アーカイブ