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【日本】特許異議申立事件・累積件数が1000件を超える

2016/8/5、日本国特許庁(以下「特許庁」とする)はH27.4からの制度開始以来、特許異議申立事件の累積件数が8/1現在、1001件(特許異議の申立てがされた特許権の数)に達したと発表しました。

特許出願等統計速報(H285月分、7/29発表)によると2016年に入ってからの特許異議申立件数は87件(1月)、111件(2月)、97件(3月)、118件(4月)、121件(5月)と推移し、毎月100件前後の異議申立がなされ、件数はここ3か月で増加傾向にあります。

ここで、仮に月平均100件の特許異議申立がなされるとすると、年間の異議申立件数は1200件となります。一方で、旧特許異議申立制度(2003年廃止)の異議申立件数は2002年では3150件、2003年では3896件あり、年間3000件以上の異議申立がなされていました。すなわち、昨年4月に施行された新制度下での異議申立数は旧制度と比べてかなり減少していることになります。2003年の年間特許件数が約12万件であるのに対して2015年の年間特許件数は約19万件と約50%増となっており、単純に考えると異議申立の件数は多くなりそうです。にもかかわらず、最近の利用実績を見る限り新制度は旧制度ほど利用されていません。

新制度は、旧制度と同様にダミーの異議申立が認められ、特許権者が訂正請求したときは異議申立人が意見書を提出できるなど、異議申立人としては利用しやすい制度となっているはずです。にもかかわらず、新制度が旧制度ほど利用されていない理由としてはコスト、訂正請求の監視負担、情報提供の利用、無効審判での対応など、申立人側の要因や思惑が考えられます。

特許庁はまた、特許異議申立事件における異議申立事件のIPC別内訳とファーストアクションの内訳を発表しました。

IPC別内訳は以下の通りです。

Aセクション(生活必需品)202

Bセクション(処理操作;運輸)171

Cセクション(化学;冶金)295

Dセクション(繊維;紙)32

Eセクション(固定構造物)22

Fセクション(機械工学;照明;加熱;武器;爆破)44

Gセクション(物理学)102

Hセクション(電気)133

AセクションとCセクションの特許について異議申立が多いことが分かります。これらの分類には化学、バイオ、医薬、食品の案件が含まれており、化学系の分野で異議申立が盛んであるといえます。

また、ファーストアクションの割合は以下の通りです。

維持決定(即維持):28.8

取消理由通知:71.2

特許異議申立を受けても即維持決定を受ける案件が約3割あるとのことです。感覚的には即維持決定の案件の割合は多めという印象を受けました。

現行の特許異議申立制度は制度導入から1年数か月しか経過しておらず、現時点では最終処分に至った事件数が少なく、最終処分(決定)の割合は示されていません。案件の蓄積により最終的に維持決定された(訂正したもの含む)案件や、取消決定を受けた案件の割合が判明するでしょう。

特許異議申立制度については今後の動向に注目したいと思います。

<追加情報2016/9/10>各年の特許登録件数、異議申立件数、異議申立比率、無効審判件数の詳細に興味がある方はこちらをご参照下さい。

参考情報:

・特許庁「特許異議の申立ての件数が1000件を超えました」(平成2885日更新):http://www.jpo.go.jp/seido/shinpan/igi_moushitate_1000ken.htm

・特許庁「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」(平成2885日更新):http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/igi_moushitate_ryuuiten.htm

・特許庁「特許出願等統計速報」(平成28726日作成):http://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/pdf/syutugan_toukei_sokuho/201605_sokuho.pdf

・特許庁「特許行政年次報告書2004年版」:http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2004_index.htm

・特許庁「情報提供制度について」(平成271218日更新):https://www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/tt1210-037_sanko2.htm

(記事担当:横田修孝)

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